非配偶者間生殖医療を検討する際には、まず、どのような選択肢があるのか確認する必要があります。精子提供に関する法規制は国ごとに異なるため、居住する国によって選択肢も異なります。自国における規制が壁となり、不妊治療のために国境を越えたり、グレー・マーケットでドナーを探したりするケースも見受けられます。しかしながら、個人間での精子提供にはさまざまなリスクが伴い、誰が子どもの法的な親として認められるかなど、法的な問題も生じることがあります。
ここでは、今日の主要国の法規制と、不妊治療を計画する際に知っておくべき、考慮すべき法律上の論点について、その一部をご紹介いたします。ご自身のケースにおいて、具体的にどのような問題が起こり得るかを正確に把握するために、必要に応じてお住まいの地域の関係機関や法律顧問に相談されることをお勧めします。
各国のドナー精子利用に関する法規制
この数十年の間で、精子提供についてよりリベラルな姿勢を示す国が増えています。これは前向きな傾向ではありますが、とはいえ、すべての国が婚姻状況や性的指向に関わりなく、万人に精子提供を認めているわけではありません。また、国によって、ドナーのタイプに制限を設けている場合もあります。このような制限によって、ファティリティ(不妊治療)・ツーリズムの需要が高まり、後に説明するように、自国で不妊治療を受けることができない人々が、子どもを授かるために安全性の低い選択肢を選ぶ結果につながっています。
一部の国について、ドナー精子を用いた治療に関わる法規制を以下にまとめました。治療に関する法規制が、国によってどう違うかご理解いただけると思います。
主要国におけるドナー精子の利用に関する法規制
独身女性による利用 |
レズビアン・カップルによる利用 | 異性カップルによる利用 |
ドナーのタイプ | |
デンマーク |
〇 |
〇 |
〇 |
身元開示・非開示ともに |
ドイツ |
〇 |
〇 |
〇 |
身元開示のみ |
ハンガリー |
〇 |
× |
〇 |
身元非開示のみ |
イスラエル |
〇 |
〇 |
〇 |
身元開示・非開示ともに |
オランダ |
〇 |
〇 |
〇 |
身元開示のみ |
ポーランド |
× |
× |
〇 |
身元非開示のみ |
スペイン |
〇 |
〇 |
〇 |
身元非開示のみ |
イギリス |
〇 |
〇 |
〇 |
身元開示のみ |
上記の表では、限られた国における情報を掲載しています。もしお客様の国が一覧に含まれていない場合、またお客様の国での法規制についてご不明な点がございましたら、弊社のカスタマーケア・チームにお気軽にお問い合わせください。
ファティリティ・ツーリズム:子どもを授かるという夢を求めて海外へ
自国では精子提供を受けることが認められていない場合や、希望するタイプのドナーを選ぶことができない場合、海外で不妊治療を受けることを検討される方もいらっしゃることと思います。 欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の2017年の調査 によると、ヨーロッパで行われている不妊治療の約5%は、国境を越えたリプロダクティブ・ケア(ファティリティ・ツーリズム)に該当すると推定されています。
海外で不妊治療を受ける理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 自国では治療が受けられない(未婚女性やレズビアンのカップルなど、特定の国では治療が受けられないケースがある)
- 長い順番待ちを回避して早く治療を受けたい(ドナー不足により、提供を受けるまでの待期期間が長期化している場合がある)
- より安価に治療を受けたい
- 個人の希望に沿った治療を受けることができる (身元開示/身元非開示ドナーの選択や、ドナーの容姿や人柄に関する詳細な情報にアクセスできるなど)
海外で不妊治療を受けることは有効な解決策ではありますが、さまざまなリスクも伴います。たとえば、子どもの法律上の親として自国で認められるかどうかや、治療を受ける国によっては治療の質などの問題が生じる可能性があります。海外での不妊治療を検討されている方は、どのような選択肢があるか、また、考慮しておくべき事柄について、ぜひクリオスにご相談ください。
グレー・マーケットのリスクについて
精子提供が制限されている国では、無認可の精子バンクや個人が精子提供サービスを行っている場合があり、この市場はグレー・マーケットと呼ばれています。
グレー・マーケットは、治療の対象となる人に大幅な制限を設けている国や、精子ドナーの数が足りていない国でよく見られます。治療を受けることが難しい場合は、子どもを授かるという夢を実現するために、ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて精子を提供する個人ドナーを利用するなど、別の方法を検討せざるを得ない状況になるかもしれません。
自国で希望する治療を受けることができない場合や、時間的な見通しが立たない場合には、このような方法が魅力的にみえることは理解できます。しかし、決断する前に、その決断に伴うリスクを考慮されることを強くお勧めします。公的規制の範囲外でサービスを提供している無認可の精子バンクや個人の場合、規制下にて提供されるサービスと同様の品質や安全性の基準を満たしていない場合があります。例えば、ドナーのスクリーニングが十分に行われていない、あるいは全く行われていない場合には、あなたやお子さんに病気を移してしまう危険性があります。また、ドナーが何人へ精子提供を行っているかについて知ることもできません。
精子ドナーの親権の有無について
クリオスの精子ドナーは、自身が提供した精子によって生まれた子どもの父親とはみなされません。デンマークの法律では、ドナーは法的な親とはみなされず、経済的な支援を求められることもありません。また、身元開示/非開示に関わらず、ドナー側からは子どもに連絡を取らないことにも同意しています。
精子提供や不妊治療が、認可された精子バンクや不妊治療クリニック以外で行われた場合は、別の規則が適用される可能性があることに注意してください。認可された精子バンク以外の精子ドナーを利用した場合は、そのドナーが子どもの法的な親とみなされる可能性があります。
レズビアン・カップルは、双方とも法律上の母親と認められるか
精子提供を受けて親になることを検討しているレズビアン・カップルあれば、どちらが出産したとしても、両者とも等しく生まれた子どもの法的な親として認められるかどうか確認しておきたいことでしょう。不妊治療や精子提供に関するさまざまな事柄と同様に、法的な親権の問題もまた、国によって異なります。デンマークやオランダのように、どちらの母親も法律上の親となり、子どもの出生時に親権を得ることができる国もある一方で、他の国々、例えばドイツでは、分娩を行わなかった側の女性がセカンド・ペアレント・アダプションによりお子さんの養子縁組を行わなければなりません。 また、残念ながら、同性の二人の親を持つことが合法化されておらず、レズビアン・カップルの両者が同時に子どもの法的な親になることを認めていない国もあります。
この問題に関する国の法規制についてご不明な点がある場合は、ぜひクリオスにお問い合わせください。各国の法的枠組みについてご説明させていただき、お客様個々のご事情に照らして、どのような選択肢があるか確認するお手伝いをいたします。お問い合わせはこちらからアクセスできます。
クリオスと一緒にお子さまを授かるまでの計画を立ててみませんか?
クリオスは、誰もが親になる権利を持つべきだと考えています。当社のカスタマーケア・チームは、お客様のニーズに合った不妊治療を計画するお手伝いをいたします。ご希望を伺いながら、お客様に適した不妊治療をどこでどのように行うべきかご案内いたします。 今すぐ無料通話を予約するか、お問い合わせください。
本ページの目的は、ドナー精子の利用に関する法規制の概要や法律上の論点を説明することです。弊社が世界のすべての国における法規制を完全に把握しているというわけではございませんので、国によって例外や法律の変更がある可能性がございます。